CL
黙々と言っても、時々「なんこれ!いつのなん!?」とか言いながらゴミを拾い上げているし、「ねえこれ洗濯したことある?ないやろ?」と呆れながら服を洗濯かごに放り込んだりしている。
掃除という作業を手際よくやっていくツキコのおかげで、乱雑としていた(むしろここに住んでいたということが信じられないくらいには汚かった)部屋が、見る見るうちに綺麗になっていく。
その様子を邪魔にならないところから眺めていた俺は、もう唖然とするしかないというか、なんというか。
とにかく、ツキコはものすごく“デキル子”だった。
「……ゴミとか服を片づけるだけで、こんだけ綺麗になるんだな…」
「やろー?あとは洗濯したり掃除機とかかけたいんやけど、さすがにこの時間にするんは近所迷惑やし…。今日はこの辺で終了!」
さり気に“今日は”とか言いやがったコイツまた来る気か。
「……まあ、助かったし、ありがとう」
「いえいえ~近い将来奥さんになるんやし、これくらいやっちょかんとー!」
「そんなさらっと……」
「ふふふーっ。あ、ってかチョコ食べた?」
「…いや、食べてないけど」
「ふぅん。まあキイチくん甘いもの好きやないしね。好きやないんに断れんで貰ってくるバレンタインデー。ホンっト変わっちょらんねお人好し!」
「はいはい…」
小学生の時も中学の時も、高校の時も。
学校でいらないとは言えず貰ってしまうチョコやお菓子は、持って帰るとすべてツキコが食べていた。
全部食べないというのは申し訳なかったので少しは齧ったりしたが、その甘さに気分が悪くなって、酷い時には吐いてしまうのは体質のせい。
とことん甘いものを受け付けない俺を知っているからだろう、ツキコはバレンタインにお菓子を持ってくるということは絶対しなかった。
その代わりに、“もの”を持ってくることが多かった。