CL




お人好しなんかじゃない。ただ、すべてにおいて、臆病なだけなのだ。

断って嫌われることも、ツキコへの気持ちを認めて、ブレーキが効かなくなることも。

ただ、怖いだけだ。

なのに、7歳も年下のツキコは違う。

自分の気持ちから逃げないで、しっかり向き合おうとしている。

それなのに俺が、向き合わなくて、どうする。


「…ずっとごめん、ツキコ」

「……アホ、バカ、まぬけ、このヘタレっ…」

「…うん」

「7歳差とか、そんなん関係ないやんっ」

「…でも、ツキコ今18で、俺25だよ」

「…それがなんよ、関係ないもん」

「ツキコが23歳でこれからって時に、俺とか30やし」

「30歳とか一番カッコいい時やんか、あたし絶対惚れ直すけん」

「……なんそれ、本気?」

「冗談でこんなこと言わんもん、あたし」

「これから大学で他にいい人見つかるかもよ?」

「18年間一途にキイチくん好きやったあたしに何言よんのバカ」

「マジで?」

「うん。一回も気ィ変わったことないけん」

「……そりゃすげえ…」

「……なんよ、それ。キイチくんはふらっと他の人好きになったりしたんや…?」

「いや、ないけど…。ないんやけど……」

「……ないんやけど、なん?」

「……経験がないわけではない」




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