CL
→After Story
遠くで玄関のドアが開く音がする。
ガチャンと閉まる音のあとに、こちらへ近づいてくる軽やかな足音。
寝室のドアが開く気配。更に近くなる人の気配。
……誰だろう。
夢うつつに考えていると、バフッと布団の上から叩かれた。
……あ、なんだ。
「おはようキイチくん!起きて!」
ツキコか。
「……んー…」
「ねぼすけ!起きろー!」
バフバフと布団を叩いてくるツキコを、うっすらと瞼を持ち上げて見上げる。
顔のある場所を確認すると、寝転がったまま右手を伸ばす。
後頭部に手を回して引き寄せて、「わわっ!」と焦るツキコなど無視でキスをする。
顔を離して見つめると、ツキコは淡く頬を染めていた。
「……おはよう」
「お、おはようやないし!不意打ち禁止!」
「えー、やだそれ」
寝起きの声で言いながら、今度は彼女のその細い腕を掴んで引っ張る。
あっさりベッドに引きずり込まれるツキコさん。
たぶんツキコなりに抵抗はしたんだろうけど、残念ながらそれは無抵抗に近かった。
ツキコはだいたい力が強いほうじゃない。昔から。