CL




まどろみの中で交わす会話はなんだかスローだ。

どうでもいいことしか話さないし、でもそれがたまらなく愛しいような。

こんな時間が、ずっと続けばいいのにとさえ思う。

そうも行かない世の中だけど。


……あぁ、そうか。だからこういう時間が愛しくなるのか。

26年生きてきて、ようやくわかるそんなこと。

ツキコが彼女になってから、新しい発見が多い気がする。

空の雲の流れ方。5月の風の気持ちよさ。道端に咲く花の色。たまの休みの過ごし方。

それは全部、傍に居るのがツキコじゃないと知らなかったこと。


「……ツキコって」

「…んー、なに?」

「……なんか不思議だよな」

「えー、なんそれっ。初めて言われた、不思議とかっ」

「……や、今ちょっと思って」

「どこが不思議なん?」

「……そう聞かれると困る」

「意味わからんしー」

「……まあ、ツキコがツキコでよかったなって話」

「……んー、そっか」


結局はそうやって、どうでもいいような話で終わる。

それが逆に、心地いい。




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