CL




「……あ、はあ…も、くるし……」

「……ごめん」

「……い、いけどー……あ、ちょっとっ」

「…なにか」

「いきなりボタン外すのなしっダメっ」

「じゃあボタン外しますよーっと」

「もおーっ」

「いまさらやめろとか無理やけんね?」

「……別に、そんなこと言わんよ…」


“だって、あたしもムリやもん”


そう言って目を逸らす彼女がたまらなく愛しかったので。

もう一度、彼女の好きなバードキスをしてあげた。






隣で眠るツキコを見つめる。

時刻は午後3時。おやつの時間だ。

暗いほうがいいだろうと思ってカーテンは閉めたまま、窓だけ開けていると、そのカーテンを持ち上げて午後の風が流れ込んでくる。

ふわりと膨らむカーテンの次に、風はツキコの髪の毛を撫でていく。

くすぐったいのか、彼女はもぞっとベッドの中でみじろいだ。

むにゃっと動くその唇が可愛くて、思わずちょっと笑ってしまった。

この気持ちを一言で表すなら、どんな言葉になるだろうか。


眠気を誘う昼下がり。心地よい午後の風。

隣には、すやすやと眠るいとしい恋人。

……あぁ、そうか。

きっとこれが、幸せというヤツだ。





【おわり】




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