CL
シャッ、と。
乾いた金具の擦れる音が聞こえて、夢と現実の間を彷徨っていた意識がようやく覚醒した。
重たい瞼をゆっくりと持ち上げる。
ぼやけた視界に、窓が映った。
どんよりとした風景と窓を打つ雫で、あぁ外は雨が降っているんだなと、目覚めたばかりの頭で思った。
「おはよう、イズミくん。眠れた?」
いまだに重たい瞼でゆっくり瞬きをしながら、窓へと向けていた視線を、声のした方へと移動させる。
そこには、カーテンを掴んだままこちらを見下ろす、保健室の先生の姿があった。
左の耳の後ろで輪っかの形で一つに束ねた髪の毛が、数本、白衣に落ちてやわらかな栗色を目立たせた。
「……眠りました」
さきほどの問いかけに、眠気でまだよく動かない口を、なんとか動かして答える。
先生は少しだけ口元を緩めた。