CL
「あはは…うん、私も起こそうと思ったんだけど…」
「…けど、なんですか」
「……イズミくん、なんだかすごく、よく眠ってたから…」
布団があって、よかったと思った。
でなければ、思わず硬直してしまったことがバレてしまうから。
図星、だった。
僕が何も言わずに布団を引き上げると、先生は僕が怒ったと勘違いしたらしく、慌てたように手刀を切った。
「あ、ごめんねっ。私の勝手だったね…早く帰りたかったよね」
少し困った表情をして、自分の白衣の裾を正す仕草をする先生が、布団のぼんやりした影越しに見えた。
違う、怒ったんじゃない。
本当に、ぐっすり眠れたことを言い当てられて、気恥かしくなっただけ。
そう言おうとしても、口は開いてくれなくて。
だから、怒っていないと示すように、少しやわらかい声色で、まったく違うことを言った。