CL
「……世界の終り、かあ…」
どこか遠くの方を想うように、先生は小さな声で、僕の言った言葉をもう一度紡いだ。
自分で言うのと誰かが言うのは違う風に聞こえて、客観的に思えるその言葉は、なんだかバカみたいで照れ臭くなった。
シーツをきゅっと握る。
保健室のシーツは、少しごわついていた。
「…たとえば、ね。イズミくん」
静かに降ってきた声は、いつもより、穏やかなもので。
僕は返事の代わりに、布団から顔を上げた。
先生は窓の外を眺めていて、僕はその横顔を下から見上げる形になった。
まだ20代前半の、綺麗な横顔。
「…たとえば、今日、世界が終るとしたら」
そこまで声にしてから、先生は僕を見下ろした。
微かに、頬を緩ませた微笑。
「……イズミくん、どうする?」