CL
少しだけ、楽しんでいるんじゃないかと思わせる表情だ。
「どうって……」
改めてそう聞かれると、返答に困る。
別に逃げようとも思わないし、死ぬなら死ぬでなんとも思わない。
どうせいつか、人間は死ぬもので。
その結末に抗うことほど、滑稽な話はないんじゃないかとさえ思ってしまう僕は、おかしいのだろうか。
何も答えない僕に、先生は「難しい?」と言って笑った。
「まあ、非現実的だもんね」
「……それはそう、ですけど」
「でも私は決めてるんだよ~。今、世界が終るなら、どうするか」
そう言い切って、先生は僕を見て、目を細めた。
「――絶対、イズミくんを死なせない」
先生、ごめん、やっぱり嘘。
僕も今、世界が終るなら、どうするか決まったよ。
すぐ傍にあった細い腕を、僕は掴んで、引き寄せた。
白黒の世界が、崩れ去っていく気がした。
━ End ━