CL




椅子を持って来れば届くのかもしれないけど、でもなんだかダルくて、面倒で。
わたしは項垂れるようにうつむいた。
結局、“これ”が答えなのかもしれない、なんて。

「……バカみたい」

自嘲交じりにつぶやいた言葉、それは。

「…なにがバカなの」

背後から聞こえてきた声に、そう問いかけさせる引き金になってしまった。
酷く、聞き慣れた声。
嫌って言うほど、聞いてきた声。
心臓が、ぎゅうっと、握り潰されるほどに痛みを覚えた。
振り返らなくても誰だかわかるけれど、わたしはどうしても振り返ってしまう。
けれど振り返った先には誰も居なくて、かと思えばわたしの隣をスッと通り抜ける人影があって。
その人影を追うと、さっきまでわたしが見上げていた本を、特に苦労もせず手に取る、見慣れた姿があった。
しまった、と、思った。





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