CL




「あ、ユウく…」
「はい」
「…………っ」
「これ、読みたいんじゃないの」

いつもの無表情めいた顔で、棚から取り上げた本をわたしに差し出す、ユウト。
わたしは目の前に差し出される古びた本を見つめて、恐る恐る、それを手に取った。

「…あ、りがとう…」
「…別に」

受け取ったカビ臭い本を胸に抱き、ユウトの顔も見ないでお礼を言う。
対するユウトも、わたしの方を見ずに短い返事をした。
絶対、この本のタイトル、見えてるはずなのに。
彼は何も聞いてこない。
ただ静かに、わたしの傍に居るだけ。


『血縁』
そんな単語の入った、タイトル。
わたしだって、本当はこんな本を読んでも意味ないって思ってるけど。
でも、どうしても、読みたかった。
どこかに、希望を見出したかっただけかもしれない。
浅い考えだとしても、この感情をどうすればいいのかわたしにはわからなかったから。
もう、崩壊してもいいところを、ギリギリで保っている、そんな状態。
おかしな話だと、自分でも思う。
だけどわたしは、この感情の捨て方を知らない。





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