CL




「…リナ姉」

彼は、わたしの流す涙を、右手で拭う。
わたしを呼ぶ、その声に、その手に、体温に。
何かが、崩れて行く音がした。

「――いやっ!」

パシンッ、と。
乾いた音を立て、わたしの右手は、彼の右手を拒絶した。
よろけてしまったのはわたしの方で、後ろの本棚にぶつかったわたしは、膝から崩れ落ちそうになって。
それを、彼の腕が支えてくれたおかげで、床に打ち付けられずに済んだ。
2人してズルズルと、埃ばかりの床に座り込む。
わたしが完全に座ったのを確認すると、彼はわたしを支えていた腕をそっと離した。
離さないでほしかった。
自業自得なのにね。
そう思ったら、また涙が溢れて来て、わたしは両手で目を押さえながらうつむいた。




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