CL
ピンポーン
と、ウチの呼び鈴が押される。
「はーい」とお母さんが出ていく声がする。お母さんも誰が来たかは16年間の習慣ですでに把握済みだ。
少ししてから「ハナー!ナオくん来たわよー!」と階段の下から呼ばれる。
あたしはまだ用意ができてないみたいな様子をワザと作って、「はーい!」と返事をして鞄を手に取る。
肩にかけながら、可愛い紙袋をヤケクソ気味に持って部屋のドアを開ける。
階段を降りると、玄関には見慣れた幼馴染、ナオの姿があった。さっき窓から見てたけど。
「おはようハナちゃん。今日もギリッギリまで寝ちょったんや?」
「ハナちゃんとか呼ぶな気持ち悪い。ってかそんな寝ちょらんし!」
靴を履くあたしを見下ろして、ナオは笑いながら話しかけてくる。
あたしの手に握られた紙袋には気づいているのか、いないのか。
や、気づいてたら言うよね、だってナオだし。
「えー、でもいっつも慌てて降りてくるやんお前。用意できちょらんのやろ?」
「別にどっちでもいいやんそんなん。あんたが来たら降りてくるんやし問題ないやろ!」
「たまには俺のこと呼びに来てくれてもいいんやけどなー」
「行かんしアホ。」
あたしは暴言を吐きながら玄関のドアを開ける。