CL




だけど高校受験を控えた時期、スッと、怖くなったのだ。

ここは田舎で、中学までは自然と同じ学校へ通っていたけれど、高校は違うんだって理解したから。

違う高校に行ってしまったら、いくら家が近くて幼馴染だからって、お互いの生活があるから、今みたいに会えないんじゃないかって。

今みたいに、一緒に登校することなんてできないんじゃないかって。

そう、思ってしまったら、どう足掻こうが涙が出た。

今でこそ同じ高校に通えてホッとしているけど、あの時あたしはたしかに、ナオに対する気持ちが“きょうだい感覚”ではないことに気が付いて、否、気づかざるを得なかった。

だから、いつから好きなのかはっきりしない。

たぶんもうずっと好きだった。



そんなわけで、ようやくこの気持ちを認めたあたしは、この2月14日という日に戦いを挑もうと思ってる。

幼馴染っていう位置はすごく楽。でもそれは、偶然の成り行きが作った繋がりで、お互いを思って繋がっているわけじゃない。

あたしは今日、その幼馴染という繋がりをぶち壊そうと思ってる。

もちろん、怖いけど。だけど怖がってちゃ、なんにもできないから。


あぁでも……どこで渡そう。


「あっ」


脳内で頭を抱えていたあたしは、突然隣から聞こえてきた声に思わず「なん!?」と大袈裟に反応してしまった。

見上げた先に居たナオは、あたしではなく、あたしの頭越しにある向こう側を見ていた。

つられて後ろを振り返ったら、そこにあったのは小さなパン屋さん。

もうかれこれ40年以上は続いてる、この田舎町にある唯一のパン屋さんだ。



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