CL




そのショーウィンドウにはパンがたくさん置いてあって、レジカウンターの下にあるガラスケースには美味しそうなケーキも並んであった。

そこへレジカウンターに出てきた顔なじみのおっちゃんが、店の前で立ち止まっていたあたしとナオに気が付いて店から出てきた。

あたしとナオは、このパン屋さんのケーキが大好きなのだ。


「おはようさん。今日も寒いよなあ」

「おはよーおっちゃん。今日ケーキ焼いたんやー」

「おうおう。今日はなあ、チョコレートケーキが美味いと思うんじゃ」

「マジでっ。あ、ちょい見てっていい?」

「いいけんどが、遅刻せんようになあ」

「大丈夫っちゃ。ハナ、見てこうや」

「別にいいけど朝から食べたくなるやんかー!おっちゃんショートケーキ焼いちょらんのー!?」

「焼いちょろうがー」


さっきのさっきまで左手の紙袋をどこで渡そうかって悩んでいたのに、おっちゃんの作るケーキの誘惑にはその悩みも勝てないらしい。

あたしとナオは、店に戻るおっちゃんの後ろを追うようにして店に入る。

ガラスケースの中にある数々のケーキを、あたしたちはしゃがみ込み、まるで子供みたいに目を輝かせて眺める。


「やばー…もうホントショートケーキ食べたいんやけど…」

「ハナ、ショートケーキ好きやもんな」

「うん、しんけん好き」


ナオに言ったんじゃないのに、なんか今ものすごい心臓が波打った。




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