CL




違う違う。落ち着けあたし。今のはナオじゃなくて、ケーキに対して言ったの。

そう思いこませるように心の中で何度も言って、ショートケーキを見つめて落ち着くのを待つ。

隣でチョコレートケーキ見てたはずのナオは、どうしてか黙ってしまった。

この沈黙に耐えられなかったあたしは、ショートケーキから視線を外して、そっと隣のナオを見た。


「…な、なんで黙るんよ…」

「……や、別に。ショートケーキ好きのハナちゃんの将来が見ものやなーっち思っただけ」

「は!?なんそれ、は!?」

「おっちゃんのケーキが美味しいけんっち、食べ過ぎんなよー、丸顔」

「しゃーしいわっ!ってかあたしが食べる時はナオも居るやんか!同(おんな)しくらい食べよるんやき、あたしが太るんならあんたも太る!」

「や、俺太らんし」

「なんそれ、ちゃきいわっ!」


今の今まで黙り込んでいたのが嘘のように2人して喋る。

店の奥に戻っていたおっちゃんが、その会話に笑いながら出てきた。


「2人とも高校生になったんになあ。変わらんよなあ」

「あ、よく言われるわ。ハナとか丸顔童顔のままやし」

「そこ関係ないやん!ってかナオだって精神年齢5歳のままやろ!」

「えー、ハナちゃんそんなこと思いよったんやー」

「な、なんよっ」

「せっかく帰りにケーキ買っちゃろっかなーっち思いよったんやけどなー」

「うそお!?え、うそ、ホント!?ちょっと待ってさっきの嘘やけん!」

「取ってつけた感じやし。どうしよー」

「もうあんたホントちゃきいやろー!ごめんっちゃー!」




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