CL
もはやバレンタインのチョコなどモロ忘れで、あたしはナオの制服の裾を引っ張って説得。まるで3歳児が親におもちゃをねだるようなそんな感じ。
あたしたちはホントに変わらない。昔からこうだった。おっちゃんも言ってるように、ずっとこうだと思ってた。
でもあたしは変わりたい。幼馴染ってだけじゃなくて、もっと違う次元でナオと一緒に居たい。
そう思うくせに、用意してきたチョコはいまだに渡せないままで。
負けず嫌いって強気の姿勢でいたけど、実際その時になると勇気が出ないあたしってバカ。てんで弱虫。
ナオだって気づいてくれてもいいのに。ナオのバカ。アホ。気づけ鈍感。
そんな思いを込めてナオの制服を引っ張る。ショートケーキも食べたいし、だけどチョコにも気づいて欲しい。
女の子って忙しい。
「わかったわかった。買っちゃるけん制服引っ張んな」
ナオは笑いながらそう言って、制服を掴むあたしの手を握った。
ドキッとした。思わず硬直した。
そのまま制服から引きはがされて、結局は手も離されちゃったけど。
…手を握ってくれたのは、何年振りだろう。
久しぶりすぎて、ナオの手がすごく大きなことを初めて知った。あたしのグーにした手が、すっぽり隠れちゃうくらい。
「…ほ、ホントに?」
「ホント」
「ほ、ホントにいいと?」
「なんなんお前ー、さっきまでしんけん欲しがりよったくせに」
「う、うん、いや食べたいんやけど…」