CL




「…なんか、世界の終りって感じ」

不意に、隣から聞こえてきた聞き慣れた声。
キヅキは俺より若干背が高いので、正確には少し上の方から聞こえてきた声。
その声が紡いだ言葉は、今まさに俺が考えていたことで、だから思わず顔を上げてキヅキを見た。
そしたらキヅキもこちらに視線を向けて、瞬きをした。

「……なに?」
「…俺も思った」
「なにを」
「世界の終り」
「マジで?」
「マジで」
「なにそれ、以心伝心?」
「ははっ、うるせー」

なんとなく曖昧なやり取りをして、静かに笑う。
次第に笑い声が消えたら、さっきよりも、世界の終りが現実めいたような気がして、少しだけ怖くなった。
今、寒いと思ったのは、気温の低い中に長時間居るせいか、それとも怖いと感じたからか。
どっち、なのだろうか。
無意識に、左の手で右の腕を擦った。
左手の甲が微かに、キヅキの左腕に触れた。
一瞬だけ感じたぬくもりが、どうしてか酷く、安心した。
こんなに臆病だったっけ、俺。





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