CL
ナオはあたしの3歩後ろの方でため息をつく。
うっ。ため息つかれるとちょっとキツイかもしれない。
いや、でも!あたしにはあたしの言い分があって!
ってか、ため息つきたいのはあたしの方だっつーの!
「……ハナー」
「…………」
「なに怒っちょんの?」
「……別に怒っちょらんし」
「嘘やろ、しんけん怒っちょん声やし」
あ、なんか今のキュンときた。
ナオはあたしの声色ひとつで機嫌がわかるんだなーって思って……ってアホか!
ダメだダメだ。これくらいでほだされちゃいけない。
これくらいで気を許してしまったら、ナオは絶対に気づかないから。
すっごく怒ってるんだっていうことをわかってもらわなきゃいけない。
それから、どうしてあたしがこんなに怒っているのかを理解してもらわなきゃいけない。
そうだ、そうなのだ。
だから耐えるのだ。
いくらナオが、早歩きであたしの前に回って、あたしの足を強制的に止めて、あたしをじっと見下ろしてこようとも、だ。
「……ハナ」
「……な、なんよ」
「目ェ逸らさんでこっち見て」
「……やだ」
「俺の方見てっちゃ」