CL




自分の足元へと視線を落としていたら、ナオがあたしの両頬に手を持ってきてグイッと顔を持ち上げた。

ちょっと痛かった。

でもそれくらいナオは、あたしに顔を上げてほしかったのかも、なんて思ってしまう。

っていうかそれくらい、ナオも怒ってる?


「……痛いんやけど」

「うん、ごめん。やけどハナ、ずっと機嫌悪いし」

「うん、悪いよ?」

「なんで?」

「…自分で考えてみたらいいやろ」

「考えた。やけどわからんかった」


わかれバカ。

わかって欲しいんだよあたしは。

なんて思っていたあたしに、ナオは言う。


「…あんさ、ハナ。16年間一緒に居っても、やっぱわからんことっちあると思う」

「…………」

「例えばさ、俺はずっと16年間ハナのこと好きやったけど、ハナ知っちょった?」

「…………。ううん」

「やろ?だって俺も、ハナが俺のこと好きやったとか知らんかったし」

「…………。うん」

「やけん、そういうこと。ハナは今、たぶん俺になんかわかってほしいことがあるんやろうけど、でも俺にはそれがわからんの」

「なんでよ、ちょっとくらいわかってくれてもいいやん!ずっと一緒に居っちょったんに!」

「うん、できれば俺もわかりたいんやけど。でもさ、お互いその時その時で感じ方っち違うと思うんよね。男子と女子っち考え方全然違うし」

「……そ、それはそうかもしれんけど!」

「けど?」




< 51 / 192 >

この作品をシェア

pagetop