CL
「だって、絶対可愛いやろ」
「な、なに、なにがよ!?」
「“全然手とか繋いでくれんけん、怒っちょった”とか」
「わああああもうバカバカばかバカばかバカバカッ!!」
なんのためらいもなしに言うナオを、あたしは左に持っていた鞄でバシッと叩く。
そう、さっきあたしがナオに話した、怒っていた理由。
まさにそれ。
一緒に学校行く時も、帰る時も、出かける時も。
ナオは全然あたしと手を繋いでくれなかったから、あたしと手を繋ぎたくないのかなとか、なんで手繋いでくんないのとか、そうやって考えてひとり悶々としてたのだ。
なんだか解決してしまうと、ひとりで悩んで怒っていたことが途端にバカらしくなる不思議。
だって今、あたしの右手は、ナオがしっかり握ってくれているから。
しかも恋人繋ぎ。どうしよう、恥ずかしいけど、超うれしい。
「って、ていうか!ナオもなんで手繋いでくれんかったん!?」
うれしさと妙な緊張感と少しの恥ずかしさを全部かき消すように、あたしは少し大きな声で尋ねる。
ナオは隣でちょっと話すのを悩むように首をかたむけ、でもすぐに言う決心をしてくれたようで。
「……一線、みたいな気がして」
と。