CL




「……たとえば、の話だけど」

なんの前振りもなく、キヅキがそう切り出した。
俺は返事もしないし顔も上げない。
けれどキヅキは俺がちゃんと話しを聞いているとわかっているのか、こう続けた。

「……たとえば、今日世界が終るとしたら」

“今日、世界が終るとしたら”
たとえば、地球に隕石が落下してしまう、だとか。
たとえば、突然この世という存在が消滅してしまう、だとか。
そんな、非現実的な出来事、あるはずない。
そう、思っているくせに。

「……どうする?」

同時に視線がぶつかって、静かな、でもどことなく真剣な声色で問われたら、なんと返していいのかわからなくなった。
わからないのに、口を開く。

「…………っ」

何も言えなくて閉じる。
そして少し考えてまた開き、

「…………っ」

やっぱり言葉は出てこなくて、口をつぐむ。
結局、俺がその問いに答えることはできなくて。





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