CL
社会人編
思い出したらダメな気がする。
いや、違う。ダメなのだ。
だって思い出したら、絶対仕事が手につかなくなる。
……なんて、こんな風に考えてる時点で、すでに仕事なんて手についてない。
私は誰も居なくなってしまったオフィスのデスクで、ため息をつきながら項垂れた。
どれもこれもアイツのせいだ。
そう、アイツ。黒崎のせい。
2月14日っていうのは、俗にいうバレンタインだ。
私は友達と「友チョコしよー」って話してて、「義理チョコ誰にあげるー?」って話し合ったりして、それなりにチョコレートを用意していた。
出社してから友達みんなとチョコを交換したり、義理チョコを配ったりして、なかなかにバレンタインを満喫してた。
まあ本命チョコっていうのを25年過ごしてきて誰にもあげたことないんだけど。
で、あとは帰って自分の分を食べるだけって思って、ちょっとウキウキしてたのは否定できない。
帰ったら甘いもの食べよーって考えると、どうしてもご機嫌になってしまうのは女子の特権かもしれない。
だから今日は、早く仕事を済ませて帰るつもりだった。
友達もみんな同じことを考えているのか、いつもより仕事がはかどっているように見えた。
私も頑張るかと、人が意気込んでいたところで、ようやく登場するのが黒崎。