CL
『先輩、コーヒーですか?』
私が給湯室でコーヒーを作っている時、偶然なのかなんなのか、後輩の黒崎がひょっこり現れた。
若いにしては珍しい黒髪、整った顔立ち、細身のおしゃれなスーツを難なく着こなす長身のモデル体型。
どっからどう見てもイケメン。文句なしの王子様。
そんな黒崎は、もちろん社内で大人気。
入社直後から私の友達は言うまでもなく、社内のほとんどの女子がすぐに目をつけてた。今日だってチョコをいくつ貰ったんだか。
私はお湯が沸くのを待ちながら、給湯室に入ってきた黒崎を見上げる。
『なに、黒崎くんもコーヒー飲みたいの?』
『先輩が作ってくれるなら飲みたいですけどね』
『カップ一人分しか用意してないから』
『心が狭い人ってモテないですよ?』
『うるっさい』
『ってか作ってくださいよ。さっきクドウさんにチョコ食わされて』
クドウ…あぁ、工藤さん。たしか黒崎と一緒に入社してきた23歳の可愛い子。
こちらも入社直後から野郎共が目をつけてたはず。
私の隣のデスクに座る川部なんて私に「工藤さんってどう?」とか聞いてきたし。知るかっつーの。