CL




「はあ……」


無意識にため息が出た。もう仕事が終わる気なんてしない。

頭の中はあのムカつく後輩のことばかりでめちゃくちゃ。

友達はみんな不思議がってた。「いっつも仕事早いあんたが今日に限ってどうしたの」って。

ホント、なんなの。

今日は早く帰って、家で美味しいチョコレート食べながら、この間買っておいたちょっと高めのコーヒーを一緒に飲む予定だったのに。

全部だいなしだ。絶対どれも黒崎のせい。

……って、あぁ、また思い出してしまった。

思い出したらダメだって、何度自分に言い聞かせても意味なんて皆無。

仕事仕事って、考えれ考えるほど、浮かんでくるのは給湯室での出来事。黒崎のあのムカつく笑み。

それを掻き消そうとして仕事に没頭しようとするのに、けれど仕事に打ち込もうとするほどに邪魔してくるアイツ。

悪循環にもほどがある。


「……もうヤダ…」


とうとう私はデスクに突っ伏して、更には涙ぐんでしまう。

ムカつく。ホントムカつく。なんなのもう。なんであんな年下に私がこんな振り回されなきゃなんないの。

あんなヤツ、絶対嫌いなんだから。入社してきた日からずっと、苦手なんだから。

ましてや、好きになるなんて、ありえないんだから。

宣戦布告してきたって無駄だ、バカ。だからもう私の中から出て行ってくれ。お願いだからこれ以上振り回さないで。

そう、思っていたのに。




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