CL
「……なによ、これ」
「チョコレートです」
「え、なに、女の子からたくさん貰った中のひとつとかいらないんだけど」
「それ、嫉妬ですか?」
「はあ!?」
「冗談ですって。さっきここに来るまでに街頭で配ってたヤツです」
「……なんでそれくれるのよ」
「糖分って、大切なんですよ?」
どうぞ、と。包みを私にもう一度差し出してくる黒崎。
私は不承不承と受け取り、手に持った包みを見つめる。
……高そうなお菓子。
本当は家でチョコレートを食べるはずが、こんなことになってしまったわけで、だから私はこの包みを早く開けてみたくてしかたなかった。
その気持ちが顔に出てしまっていたのか、黒崎がクスクス笑いながら「食べてもいいですよ」なんて言ってきたからなんだか無性にムカついた。
でもちょうど小腹も空いてたし、ムカつくけどムカつくなりに食らってやろうと思って、私は「…いただきます」とだけ礼儀をわきまえてから包みを開けた。
中身はチョコレートケーキをコーティングしたお菓子で、一口食べたら、ふっと肩の荷が下りるような甘さが広がった。
周りのコーティングのカリッとしたようなチョコレートは甘くて、けれど中に包まれているチョコレートケーキはしっとりとしてほろ苦い。
くどくない、安心する甘さと触感で、私は思わずもう一口。