CL
「…美味しいですか?」
クスクスと微笑を浮かべてそう尋ねてくる黒崎に、やっぱりムカつくけど、でも「美味しい…」って答えるしか他なかった。
一気に食べてしまうのがもったいないくらい美味しいそれを、大袈裟だけど、私は大事にデスクに置いた。
そんな私を一瞥してから、黒崎はこちらに椅子を寄せて、私のパソコンデスクを横から覗き込んできた。
だから、近いんだってば!
「仕事、あとどれくらい残ってるんですか?」
「……黒崎くんには関係ないでしょ」
「それって、遠回しに帰れって言ってます?」
「わかるなら帰って」
「嫌ですって、言ったら?」
「なにそれ」
「こんなとこで泣いてた先輩、俺が置いて行けるとでも?」
目が合う。心臓が飛び跳ねる。
違う、違う。これは違う。全部違う。
あぁ、もう、ホントに。
「……いい加減にしてよっ!」
これ以上振り回さないでって、私の中に踏み込んでこないでって、そう思っているのに。