CL
「…これくらいで?」
「…こ、これくらいって…」
「まだ足りませんけど」
「そ、そんなっ…すごい長いしっ…」
「じゃあ、先輩がちゃんと“好き”って言ってくれるまで」
「えっ」
「先輩の唇、チョコ味で美味しいですから」
「なっ…」
「本命チョコは、これでもらったことにしてあげます」
「……もう、ホント、最悪、バカっ…」
――好き。
そう、言おうとした私の声は、再び降りてきた彼の唇にパクリと食べられてしまった。
黒崎のバカ。絶対、狙ってる。
もう彼は私の唇を離すつもりはないようで、私もそれに応えるのが精一杯で。
そういえば仕事がまだあった。なんて停止しかけの思考で思う。けれど思考は一瞬で、彼の吐息に溶けて消えた。
どうやら私は、逃げようなんて思う隙さえないくらい、黒崎に囚われてしまったらしい。
胸焼けするほど甘やかな、チョコレート味の口づけは、まだまだ終わりそうにない。
end.