CL




するとキヅキは、さも「なにが?」と言いたげな表情で俺を見て、そして思い出したようにうなずいた。

「あぁ、世界が終るとしたら?」
「そう」
「聞きたい?」
「なにそれ」

自分は言わないつもりで居るんじゃないの。
そう思って、ちょっと棘のある言い方をしたら、キヅキは微かに苦笑を浮かべた。

「悪い。別に言わないつもりとかじゃないから」
「じゃあ言えよ」

もったいぶるキヅキの態度に、俺は急かす言葉を投げかける。
そんなに焦らすほど大袈裟なことでも言うのだろうか。
なんて考えていた俺は、

「…逃げるよ」

キヅキの答えに心底ため息が出た。
なんだか、聞いたこっちの方がバカだったんじゃないかとさえ思う。
俺は真剣に考えて答えられなかったっていうのに、キヅキの答えは安易すぎて、わけもわからず、やるせない。
別に、どんな答えが返ってくるか期待していたわけじゃ、ないけど。
そもそも、世界の終りなんてありえない。
少なくとも、俺等には関係ない。





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