CL




誰のせいでこうなったと思ってるんだ、誰のせいで!

そう怒鳴りたい気持ちを抑え、私は隣のデスクに座った黒崎からぷいと顔を背ける。

実は気まずかったりもする。

今日一日、私はできるだけ黒崎を避けて過ごしていたのだ。

いや、それは私ひとりの気持ちの問題であって、黒崎が直接私に何かしたとか、喧嘩したとかそういうことではない。

だけどやっぱり、昨日見た光景を思い出すと、頭が勝手に怒りを作り出してしまう。

怒りっていうか、なんだろう、情けなさ?

惨めっていうか、もしかしたら恐怖のそれ。

私はそれらすべてを振り払うようにかぶりを振って、目の前の仕事に専念しようとパソコンと向き合う。

残っている仕事はあと少しだ。


「……先輩」

「私仕事中なんだけど」

「怒ってますよね」

「別に」


一切黒崎とは目を合わさず、手短に私は質問に答える。

そんな私の態度で、彼も私が話す気はないとわかったのか、それ以上は何も言わずに、ただ黙って残りの仕事を手伝ってくれた。

仕事がすべて片付いたのは、それから約30分後のことだった。



会社を出ても外が大雨なのは変わらず、道行く人が傘をさして歩いている姿を見ていっそううんざりした。

雨の日は極力家に居たい。傘をさして歩道を歩くことほど、面倒な事はない。

私が歩道を見つめている隣で、黒崎は傘を広げる様子を一向に見せなかった。




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