CL
知ってる。黒崎はそういうヤツだ。
そういう人を、私は好きになったのだ。
なのに、どうして私は、またひとりで逃げて、なかったことにしようとしていたんだろう。
バカみたいだ。本当に。
きちんと話せばきっと、ううん、絶対。
彼は私と、真剣に向き合ってくれるのに。
「……ごめんなさい…っ」
気づけば私は泣いていた。
膝の上でぎゅっと両手に拳を作り、顔をうつむけて涙を隠した。
落ちる涙を懸命に拭っても、涙は止めどなく流れてくる。
必死に泣き止もうとする私に、黒崎は。
「……話せるようになるまで待ってますから」
“だから、泣いてもいいですよ”
そう言って、私の頭を二度、彼の手が優しく撫でた。
東町三丁目、ARIAマンション。
その8階にある、黒崎の部屋。
そこにお邪魔した私は、さきほど告げられた真実に、ポカンと口を開けて彼を見つめた。
「……え、っと…もう一回、言ってくれない?」
唖然とした表情はそのままに、私は黒崎にさきほどのセリフを復唱するようにお願いする。
黒崎は若干呆れたような顔で、けれどちゃんと答えてくれた。