CL




そうやって考えだしたら、さっきまでの非現実めいた感覚が、急に現実へと引き戻されていくような気がした。

「……あっそ」

キヅキにそれだけ投げ返す。
世界が終るだとか、なんだとか。そういう話はこれで終わり。
返した言葉に含めたそれ等の意味は、しかしキヅキは受け取らなかった。

「バカ、最後まで聞けって」
「…は?」

“最後?”
意味がわからず、俺は首をかしげてみせる。
キヅキはそんな俺を瞳に映して、微かに笑った。
やわらかな、微笑み。


「――逃げるよ。お前と」


左手の甲に触れた体温が、現実をおぼろげにする。
雨はまだ、止んでくれそうにない。





━ End ━





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