CL
「……あれ…?」
薄暗い寝室に入ってきた黒崎は、どういうわけか眼鏡をかけていた。
私はベッドの上で膝を抱えて座ったまま、こちらへ歩み寄ってきた彼の顔を見上げる。
「黒崎くん、目悪かったの?」
「そうですよ?普段はコンタクトなんで」
「そ、そうだったんだ……」
知らなかった。これも新しい発見。
黒縁の眼鏡をかけた黒崎は、どこか違う人のように思える。
妙に、というか、異常なまでに心臓がうるさいのは、黒崎が眼鏡をかけているから、だけだろうか。
なんて、そんなはずない。
だってこの状況、どう考えたって。
「……先輩、緊張しすぎですから」
「へっ!?」
黒崎がベッドに腰掛けるのと、私が飛び上がるのとはほぼ同時で、ベッドのスプリングが派手に軋んだ。
失態を晒してしまって、カァッと赤くなる私を見て、彼は眼鏡を外しながらクスクスと笑う。
「緊張してる先輩も可愛いですけどね」
「なっ……!」
可愛いって言うの、やめてって言ってるのに!
そう反論しようとした私は、けれど黒崎に膝を抱えていた両手を取られて、思わず開きかけた口を閉じてしまった。
グッと、一気に距離を縮められる。呼吸が止まった。