CL
「……ち、近い…」
「こうしないと、先輩の顔ちゃんと見えないんで」
「…そ、そんなに視力悪いの…」
「そうですね。特に先輩とキスしたい時は」
意味、わかんない。バカ。
悪態をつこうとした唇は、あっさり黒崎に封じられてしまった。
そのままゆっくりと倒されて、気づけば私は仰向けに寝転がって、彼を見上げる状態になっていた。
一度離れて、けれど小声で聞き取れるほどの距離しか離れない。
そんな距離で、彼は言う。
「……先輩、明日帰れなくなったらすみません」
「……えっ」
「優しくしたいんですけど、抑えられる自信もないんですよ」
「……う、うん…わかった…」
“いいよ、どうしてくれても”
そう付け加えたら、彼は意地悪く微笑んで、
「……そんなこと言って、知りませんよ」
なんて囁いて。
噛み付くような、甘ったるいキスをした。
【おわり】