人こそ美味 part2
「来ないでッ!」
佐々木麻央は尻を床に擦って後退りをし、ついには壁と背中が重なってしまった。
「君は選ばれた女。俺の為に命を捧げるんだ」
俺は一歩一歩、ゆっくりと佐々木麻央に近付いて行く。
「な、何でもするからっ殺さないで!」
生まれたばかりの小鹿の様に2本の細い足を震わせながら立ち上がると、壁を伝って逃げ回り始めた。
何処に行こうと結果は同じだ。
俺は無言でゆっくりと追いかける。
何か面白いものを見ているかかの様にニヤニヤと笑いながら…。
「お願いっ殺さないで」
可愛らしい顔を恐怖に歪め、何度も振り返る。
「私はお、美味しくないからっ」
佐々木麻央は立ち止まり、体ごと此方に振り返った。
「肉なんか全然付いてないんだからっ」
「そんなの見ればわかる。丁度いいぐらいだ」
佐々木麻央の丁寧に描かれた細い眉がピクリと動いた。
「じゃ…じゃぁ寝てあげるから」
腹黒い女、可愛いのは見た目、か…。
「君の体に興味は無い。俺は君の肉の味に興味があるんだ」
冷たく微笑む。