人こそ美味 part2
拍子抜けした俺の口からは「あ」とか「お」しか出なかった。
「純君…何か、変だよ?…大丈夫…?」
心配して俺の顔を覗き込んだ蒼井の顔が異様に近い。
「へ?…あっいやぁ、大丈夫大丈夫」
俺は顔を横にブンブン振って笑って見せる。
多分苦笑い。
そんな俺を見て「そっか」と言って蒼井はすぅっと離れた。
「中、どうぞ。…それ、いつもの場所まで…お願い、ね」
俺は品物を持って家に上がった。
履物をたたきに揃え、まっすぐキッチンへ向かう。
それが指示された“いつもの場所”だ。
冷蔵庫の隣に置いてある蛇口付きのタンクに、品物である“佐々木麻央の血”を注ぎ入れる。
一気にキッチンが生臭い鉄の臭いで充満した。
窓を開けたいところだが、そんなことしたら外に臭いが漏れてしまう。