【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
『これからお前は私と暮らす』
『…え…?』
母は父の愛人だったらしい。
そう知ったのは、12歳の冬。
母娘ひっそりと寄り添いあって暮らしてきたのに、ある日突然現れた見たこともない父に体裁の為にと引き取られた。
厳しい生活を余儀なくされていた母は裕福な父と共に行くのがあたしの為だと言った。
それでも拒むあたしに母は必ずいつか迎えに来ると言った。あたしは母の言葉だけを信じて泣く泣く従った。
身を切るような冷たい風が吹き荒ぶ真冬日、何度も後ろを振り返りながら父だと言う男に腕を引かれ母と暮らしてきた小さなアパートを後にした。