【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
真神の敷地内の一角にある我が家…橙伽様の屋敷の庭園にある四阿(あずまや)は夏は涼しく春は温かく心地よい。
自然そのものの造形を好む彼のご両親は自然をうまく活かした庭園造りをしていた。
その中でここだけは季節の花ばなに囲まれた華やかな場所となっていた。
…あまり外に出たがらなかったあたしの為に、彼が造ってくれたものだ。
そこで美味しそうにお茶に口をつけながら姫君がはにかむ。
「橙伽さんって本当にすごいです。あの十夜ですら橙伽さんには頭があがらないんですもん」
「橙伽様は鬼畜でドSですから」
「え゛!?」
素晴らしく晴れた今日の良き日に、あたしはここで若様の可愛らしい姫君と向かい合ってお茶を飲んでいた。