【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
「紫衣?…やっぱり変だよ~。」
「……!ぁ…違うの…っ」
ますます怪しむ希空の声にハッと我に返り、顔の前で大袈裟にぶんぶんと手を振った。
「その…っ、大きな犬に逢っただけで……!」
「はぁっ!?犬ぅ!?」
「う…うん…」
咄嗟に、そんなことを言ってしまっていた…。
「犬って何よ。超絶イケメンが立ってたって言うんなら面白かったのに!」
「……。」
そんなこと想像してたのね…。
どうりでいつも以上にしつこいわけだとあたしはこっそり溜め息をつく。
これに“喋る”って単語をつければ間違いなく嬉々として食いついてくるんだろうけど。
それをそっとしまいこんで、あたしは「つまんない!」と文句を言う希空を促し教室に向かった。