【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
眉を寄せた姫君の表情は心配そうな顔で…
あたしは、よく話を聞いている子だと感心すらした。
ティーカップに手をかけるとユラリ、ユラリ…と紅茶が揺れた。
「…あたくしね、継母に酷い虐待を受けていた子供だったの」
「!!?」
彼女の顔が驚愕に固まる。
あたしはそれでも彼女に笑顔を向けた。
――――もとより貴女に隠すつもりもない。
「初めて橙伽様に逢ったのは…あたくしがもう全てを諦めた時だった」
「諦、めて……?」
頷ずきを返事にして、ソッと目を閉じる。
…あの強い雨の音も、あたしの流した血の匂いにその味も……
今でも鮮明に覚えてる。
一度止まって
動き出した………あたしの運命の日。