【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
「………。」
「……っ!」
笑顔を見せた彼が、こちらをじっと…射抜くように見てる。
勘違いでないのなら
あたしを……見てる……?
戸惑いに瞳を揺らし、バクバクと激しく脈打つ心臓に…あたしは息も上手く出来ない。
誰…?
いや、知ってるでしょう…?と心の奥から声がする。
「紫衣…?」
顔色を変えて彼をただ見つめるあたしに、希空がそのただならぬ様子に気づいて気遣うように声をかける。
だけどあたしはそれに返事も返せない。
あたしの頭の中はただ一つに占められて…
『俺は…真神 華夜(マガミカヤ)…』
あの心を奮わす声が…鮮やかに響き渡っていた。