【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
「あぁ、そっか。昨日は俺、狼だった。」
「……!?」
それなのに彼は、うって変わった笑顔であまりにもあっけらかんとそんなことを口にするから…あたしは目を丸くしてしまった。
「まぁ、それはそうかも知れないけど…
逢いたくなかったなんてのは……嘘だね。」
「…ぇ…」
ニヤリと口の端を引き上げてあたしを真っ直ぐに見る顔は、どこか意地悪で…何だか楽しげで…
そのくるくると変わる表情に縫いとめられる。
ぼぅっと見上げるだけのあたしに向かって、…手が伸びる。
「……!」
長い指先は、あたしの濡れたままの頬を…撫で、触れられたところからジリジリとした熱いものが走った。
「紫衣は俺に会いたかったはずだ。心の奥底で……泣く程、俺を呼んだだろう…?
…だって、紫衣は俺のモノだから。」
「……!!」
傲慢な物言いに言葉を失う。
だけどそれ以上に
子供みたいだって思っていた彼の…
180度違う…色気の滲んだ…細められた流し目に、
恐いほどに胸がドクン…ッと…跳ねた。