【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~




「とりあえず仕切り直しだな。

俺は真神 華夜。昨日の黒い狼。

よろしく、紫衣。」



「……!」



にこにことまた子供の様な屈託のない笑顔になって、伸びてきた大きな手があたしの手をとりギュッと握られぶんぶんと上下に振られる。



「真神…華夜…」



呆気にとられながらも、昨日の黒い狼と同じ自己紹介にその名前を繰り返すように呟いた。



「ん。華夜…華に夜。女みたいだろ?」



「華に…」



カヤ…なんて、確かに男の子にしては珍しい名前だ。



でも、とても綺麗な名前だと思った。



夜に咲く華…花火のことなのだろうかと、その由来に想いを馳せる。



その想いが通じてしまったのか、彼が口を開く。



「俺は“朔(サク)”の晩に生まれたから。

だからそこから連想してつけたって親父が言ってた。」



「朔…?」



聞きなれない名称にパチリと瞬きをしてしまう。



「あー…、朔は新月の古い呼び名。

夜に朔(サク)から夜に咲く華…まぁつまり、月のこと。」



「……。」



花火じゃなかったのね。



…だけど月と言う意味は彼によく似合ってる。



儚く散る花火は美しいけれど、圧倒的な存在感で夜空に輝く月が…彼そのもののようなイメージだ。









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