【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
彼をそう名付けたお父さん…何故かその気持ちが少し解ると思ってしまった。
どうしてなの…?
解ると感じることが解らないことばかり。
「紫衣は?」
「…!あたし…?」
「目が…紫色だから、“紫衣”?」
きょとんとするあたしの顔を覗き込んだ彼が、じっとあたしの瞳を見つめて…深い意味もないのだろうのに、その目力に圧される。
「そ…そう。後、母が…柚衣(ユイ)だから…一字取ったって…」
どぎまぎと、早くなる鼓動を誤魔化すように早口で返事をした。
彼は優しげな顔でそれを聞いていた。
あたしの名前なんて、ちっとも…この人のように素敵な由来があるわけでもないのに…。
…変わらず瞳を見つめて、笑んでいる。
柔らかな微笑みを浮かべたまま…次第に瞳の輝きが増す…
それは
「…うん。綺麗だな……
でも、なんでだろ…?
おまえの目…見てると、泣きたくなるよ…。」
そう言って、
輝く瞳をうっすらと覆ったのは……涙、だった。