【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~




「俺、なに言ってんだろ…」



「……っ」



眉を寄せて笑う顔があたしの心をぎゅっと押した。



手を伸ばして、自分の胸に引き寄せたい…なんていつもの自分からは考えられないひどく大胆なことが頭を過った。



彼は俯いて素早く制服の袖で涙を拭うと、すぐに顔をあげて少し恥ずかしそうに笑った。



鋭く強い力を放つ黒い瞳が、笑うと和らいで…それを向けられる度に跳ねる心臓に堪らず息を飲んだ。








――――仕草一つで惹き付けられる。








ジリジリと、胸の奥が熱く燻る。



恐い…くらい…



絶対的な引力を持ってあたしを惹き付ける。



本当に、月そのもののような人…。



「……っ」



いったいなんだと言うの……?



あなたは何なの?



どうしてこんなにもあたしを―――










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