【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
――――コンコン…コンコン…
「………。」
強すぎずに一定のリズムを刻むノックの音に、あたしはフ…と目を醒ました。
開けた瞳に映ったのは、見慣れた自分の部屋の白い天井だった。
「…あたし…泣いてたの……?」
妙にまぶたが重かった。
ベッドから上半身を起こして…信じられないとばかりに濡れた頬を触り、重いまぶたを瞬いた。
「(……紫衣(シイ)、まだ寝てるの?
学校に遅れるわよ。)」
「…!はぁい!」
ドアの向こうから痺れをきらせたようなママの声に慌てて返事をすると、パジャマの袖で涙を拭った。
悲しい夢でも見ていたんだろうか……?
昨日…まるで夢のような出来事があったから
そのせいで変な夢でも見たのかも知れない。
あたしはあまり考えたくないとばかりに、勢いよくベッドから下りると
クローゼットに掛かる濃紺のセーラー服を掴み一心不乱に学校に向かう準備を急いだ。
三上 紫衣(ミカミシイ)16歳。
昨日…喋る狼からプロポーズされた。
…多分、夢。
…だって喋る狼なんているわけがないもの。
「いってきまーす…!」