【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
「あなた…は…、“誰”……?」
震える声すら、俺を落ち着かなくさせる。
「さっき言った。」
どこか邪な心の内の思いを悟られたくなくて、誤魔化すようにニヤと笑って素っ気なく返す。
「…っ…そうじゃなくて……っ」
「おまえのモノだよ…。」
「……!!」
怒り出しそうな紫衣の言葉を遮り、囁くと…サッと白い頬に朱がさした。
ジリ…と赤い顔をして後退ろうとする紫衣の細い手首を掴み、逃すものかと引き寄せる。
「…ゃ…!」
華奢な身体は呆気なく俺の腕の中に収まった。
後ろから捕まえた身体は肩をすくめて強張った。
俯いた紫衣の長い髪がサラリと流れて…チラリ覗く白くて細い首筋が目の毒だ。
…うまそうだよなぁ…。
喰いつきたい欲を抑えこみ…艶やかな細い髪をかき上げて、露になった赤く染まった耳に唇を寄せた。
「紫衣が俺のモノなのと同じように…俺もおまえのモノなんだ。
…決まってんだよ…。
それが、《人狼》と《運命の花嫁》の理(ことわり)だから。
」
「……!?」
紫衣の身体がビクッと震えた。
だけど俺は、…さらに彼女を追い詰める。
「…絶対、逃してなんかやんない。」
だって、もう無理だから。
おまえを見つけた俺は…それを激しく実感してるんだから。
――――これは、魂に刻まれた…けして抗えることなき―――運命だ…って。