【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~




「人…狼……?は…花嫁…って……」



ますます混乱してしまったような紫衣。



振り返ると俺の腕の中、抵抗するのも忘れてギュッと俺の右腕に掴まってる。



無意識だとしてもその可愛い仕草に、堪えられなくて頬がゆるむ。



「……!」



そして次の瞬間に、ほんの少しの胸騒ぎ…



俺だけにわかる微かな気配に、一度紫衣の高校の玄関にチラリと目を向けて、また紫衣の紫色の瞳に視線絡ませて目を細めた。



「…どうしたの…?」



そんな俺の態度を感じ取った紫衣が不安げな顔をしていた。



「大したことじゃない。

…ちょーっと、ごめんね。」



「何それ……えっ!?キャー!!?」



ろくな説明もせずに、にんまり笑うとそりゃもう素早く抱き上げた。



「やだ……!」



俺によってお姫様抱っこされた紫衣が急に高くなった目線が恐いのか…必死の顔で俺の首に腕を回してしがみつく。



「そんなわけだから、これから末永くよろしくな?」



抱き上げた彼女を見て満面の笑顔。



「どんなわけなの…っ!?」



「ハハッ!説明は面倒だから後でな。……逃げるぞー!」



「なにそれ!?逃げるって……―キ…キャアァァァア!!」



紫衣を抱いたまま俺は一気に走り出した。



「コラーー!どこに行くーーっ!!」



玄関の方からジャージ姿の厳つい先生らしき人物がこっちに向かって走ってくる。



女子校生達の騒ぎに気づいたんだなー。



どうりで胸がざわつくわけだ。



だけどとっくに走り出してる俺に近づけるわけもなく…先生らしき人はどんどん小さくなった。



ごめんな、先生。







――――俺の《直感》は絶対ハズレねぇんだ。










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