【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
――――ザッッ!!
「……!?」
まるで…急ブレーキでもかけたみたいにピタリと、……彼が止まった。
「……?………何だ……?」
「……っ…何なのっ?突然っ…――真神…くん…?」
黒い瞳を鋭くさせ…しきりに辺りを見回して、じっと耳をすませているただ事とは思い難い姿に思わず声をかけた。
「なんだ……今の………」
でも彼はまるであたしの声なんて聞こえていないように呟いて…未だ辺りの様子を探っていた。
「……っ!…何かあるの……?」
何だか怖くなって…あたしも一緒に辺りを見回してみた。
だけど
あたしを抱いて固まってる彼の様子…どう見ても奇妙なあたし達にチラチラ視線を寄越して気にしながら通り過ぎ家路に急ぐ子供達…
規則的に並んだ比較的新しい家々からはそろそろ夕飯の香りが漂っている。
あたしの目には、夕方茜色に染まる…いつもの平和そのものな静かな住宅街が広がっているようにしか見えなかった……。