【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
「何をジジイみてぇなこと言ってんだよ。」
「……。」
相変わらず口の悪い…。
しかし照れ隠しなのか俯いて頬を掻き、でも…と顔をあげた。
「まぁ…俺が…成長してねぇとな。祈咲とガキは俺が守るんだ。」
「……!」
確かな決意を秘めた黒い瞳は頼もしく、私の切ないと思った気持ちを一瞬のうちに吹き飛ばす。
「…姫君のご様子はいかがですか?」
「あー…、食欲はおちてきたな。最近気持ち悪いってよく寝てる。」
言って心配そうに眉根を寄せる。
…彼の運命の花嫁は今、…小さな命を身籠っている。
子供のままではもう本当にいられない。
自身が、親になるのだから。
大人になっていく。
…自らの、意思を持って。
これがこの人の行く道だ。
未来を見据え真っ直ぐに。
「それでは本日もみっちりと予定が入っておりますので、しっかりこなしていただきましょうか?」
「…おまえほんといい性格してるよな…。絶対にさっきのジジイを根に持ってやがるな…」
「……。貴方様が大人になられて私は本当に嬉しいです。…余計な小言が減りましたからね。」
「……。」
『祈咲に逢いてぇ…』…遠い目をして呟いて、溜め息をつきながらまたパソコンに向かう。
ぼやきながらもきっちりと仕事をこなす姿に笑みが漏れた。
まだまだ…これからも成長して行くのだろう。
それをこれからも傍で見て行けることは…この上ない……幸せだ。